ニュースとヨーロッパアルプス【オーストリア・ケーブルカー火災続報】(2000.11関連)

オーストリア・ケーブルカー火災、被告全員に無罪判決(2004.2.19)に関して、Web上の情報を集めてみました。

●事故の原因と無罪の理由:

・火災原因:
運転席に取り付けられた暖房機の加熱と断定した。このヒーターは、寒さを訴える運転士の要請に応じて設置されたが、そもそも振動の多い乗り物に使用するものではないという。

暖房の通風機が壊れていたため、暖房の熱が上がり過ぎ、それが周囲のプラスチックを溶かし、最終的に油圧装置の油に火がついてしまった。

・事故責任:
「事故当時は暖房機設置に関する法的な規制はなかった、
ケーブルカーが満たすべき安全基準は当時なかった・・
など事故は予見不可能であり、現行のオーストリア法では個人の責任に帰すことはできない」

「有罪と決めつけるだけの証拠が不十分」などと結論付け、被告側の無罪主張を認めた。・・・


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(あまりに信じられない判決に、日本内、オーストリアでの反応を集めてみました)
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●日本国内の反応:

・【無罪判決】安全に責任はないのか
 150人を超える犠牲者を出した事故の責任は誰にもないとする判決には、釈然としない思いが募る。・・・・<高知新聞:社説2.21


・遺族側の木川統一郎弁護士は「こうした事故が日本で刑事訴訟になれば、客観的な予見可能性は肯定され、有罪となり得る」とコメントを出した。
 1審覆る余地も−−オーストリアの刑事裁判に詳しい田和俊輔・鳥取大名誉教授(刑事訴訟法)の話
 オーストリアでは、被害者の親族が検察官に控訴を要求する権利が司法手続きとして認められており、一定の拘束力がある。オーストリアの刑事裁判は証拠の証明力の評価が厳密なため、「立証が不十分」として無罪判決の出る率が、日本より高い。今回のように注意義務の有無などが争点となる事件では、有罪認定のハードルはかなり高いと言える。ただ控訴審は、1審の認定をある程度前提にする日本と違い、改めて証拠の収集・評価をするので、1審判決が覆る余地もかなりある。(毎日新聞2.20


・ケーブルカー火災 納得できぬ無罪判決
 日本の常識で考えれば、ケーブルカー内に火災原因となるようなものを置いていれば、どんなことがあっても大丈夫という万全の対策を講じていたとは言えず、過失責任があると判断されるのが普通だ。「責任の所在を明らかにしてほしい」と求める遺族たちの願いは当然だ。
しかし、国際的には通用しないだろう。「こんな国に行かせたのが間違いだった」という不信感を払しょくするためにも、事故の責任を今後きちんと明らかにすべきだ。
(中国新聞:社説2.21)


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オーストリア内の反応:

・無罪判決に疑問の声高まる オーストリア国内でも
 無罪判決が下されたことについて、オーストリア国内の政界や司法界などから疑問視する声が高まっている。
 同国の最大野党、社会民主党のマイヤー下院議員は同日、「判決は驚くべき内容だ」と述べ、近く開かれる下院の法務委員会でベームドルファー法務相に判決の経緯などをただす方針を表明した。
 与党の極右政党、自由党の実力者、ハイダー氏も「まったく理解できない上、適切でない判決だ」と言明。自身が州知事を務めるケルンテン州出身の事故犠牲者に限って「裁判で補償が得られないなら州政府が行ってもよい」と語った。
共同通信 02月20日


・全員無罪にオーストリアでも疑問の声
 ・・法律の専門家などからは、「企業など法人に 刑事責任を認めない 現在の刑法に問題がある」 との意見も出ています。(TBS:20日


・刑法改正の必要性議論/オーストリア下院
 無罪判決について、最大野党の社会民主党などは企業など法人の刑事責任を問えない現行刑法の不備を指摘、「早急な法改正が必要だ」と主張した。オーストリア通信が伝えた。
 法務省は刑法改正の必要性を認めた上で、草案を作成中であることを明らかにしたが、経済団体などに反対意見があり、作業が中断していると説明した。
 緑の党は、欧州連合(EU)諸国で整備されている企業刑法がまだ存在しないことについて、政府を強く批判した。 ・・政界や法曹界から疑問の声が上がっている。 (共同通信 02月20日


カプルン判決
 www.salzburg.comは安全基準をそのままにしておいた国を明確に批判・・
オーストリア政府は一審判決でショックを受け、企業刑法の整備に向けて動き始めた・・・事故の原因に間接的に関わっていた企業の責任を追及することが可能になるらしい・・(At在住:はなさん)

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まだ若い、たくさんの死者を出した日本国内での反応は当然のことと思いますが、
オーストリア内部でもこのようなEU内・国際的にも通用しないと感じられる判決に対して、多くの批判と法改正の動きがあることに少しほっとしています。

(2004.2.23)
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2/24毎日夕刊に:
ザルツブルク地検が、ケーブルカー内に違法に設置された暖房機の製造メーカ「ファルキール社」の捜査に着手した・・・
遅いなー
(2004.2.24)

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